SE構法の構造計算②
「構造計算」とは何か?(その2)
SE構法の構造計算①うえに、次の計算が行なわれる。 ⑩地震・台風それぞれの場合に、建物がどのくらい傾くのかを計算する(層間変形)。 ⑪建物の上下階の硬さのバランスを調べる(剛性率)。 ⑫建物の重さと硬さが偏っていないかを確認する。バランスよく重さを支えられるかを調べる(偏心率)。 具体的には、通常20分の1〜200分の1以上の傾きを損壊とみなして、それ以上は傾かないように設計するわけだ。角度でいうと、0.3度程度である(図 表2)。
【図表2 各階の変形の程度は、各階の数値が基準値以内であることを確認】
0.3 度というのは3メートルの高さで0.5センチ程度しか傾かないということ。この程度の傾きであれば、揺れが収まると、また元に戻る範囲内であるということ で設定されている。ボールペンでもゴルフのクラブでも、力を入れればしなるが、ある程度までなら、すぐに元に戻るのと同じ理屈だ。 また、震度5強の地震でも、地震で建具やサッシが開かなくなることがないという、安全性の検証も正確に行なう。 ここまで検証してあれば、たいていの建物は地震で倒壊することはない。ここまでがルート2の許容応力度等計算にあたる。
一般にルート2まで計算したものが、構造計算された建物と評価され、 前述の能登半島地震(震度5強)でも、最大0.3度程度の変形でとどまり、半壊は免れることができる。もちろん倒壊もしない。さらに、大地震のときに多少 傾いて内装が壊れても、ぺしゃんこに潰れない(全壊)かどうかを調べる方法が、保有水平耐力計算(ルート3)と呼ばれる計算方法である。 ⑬大地震が来たときの力を建物の重さから、破壊する力を換算する。 ⑭建物が地震によって瞬間的に大きく傾いたときに、どこまで粘り強く耐えられるかを調べる。 これが、ルート3の保有水平耐力計算である。
万が一、一瞬の強い揺れが来て建物が壊れるようなことがあったとして も、なかにいる人は助かるようにということだから、このルート3まで確かめた建物は、大地震でも理論上安全であるといえる。 これらの計算は、実際には一定の計算式を使うのだが、その数字(係数等)は建築基準法で「最低基準」が定められている。構造を設計する建築士や会社によっ ては、基準以上の係数を用いることもある。その基準づくりが企業の方針になるというわけだ。