SE構法の構造計算①
「構造計算」とは何か?
ここで、構造計算について図を入れてやさしく解説してみたい。難しいと思われるかもしれないが、その考え方は決して難しくはないし、理解することで、構造計算している建物としていない建物の強度が、いかに違うかがわかってもらえると思う。
法 律で定められている構造計算は、大きくは以下の4つである。 許容応力度計算(ルート1) 2、許容応力度等計算(ルート2) 3、保有水平耐力計算(ルート3) 4、その他(限界耐力計算・時刻暦応答解析) 。このうち、4は特殊な建築物に利用されるケースが多いので、ここでは省くことにする。構造計算は、ルート1からルート2、ルート3とより精密に建物の強 さを計算していく。 まず最初に、構造計算は以下のように「建物のすべての重さ」を想定し、調べることから始める(図表1)。
【図表1 家の重さとは?】
① 建物の重さを調べる(建物自体の重量)。 ②建物の床に乗せる、物(人の重さや家財道具)の重さを想定する(積載荷重)。 ③雪が積もったときに屋根にかかる重さ(積雪荷重)や、グランドピアノやウォーターベッドなどのように、特に重いものの重さ(特殊荷重)を考慮する。 ④全部(建物+積載物+特殊荷重)の重さを合計する。
重 さが基本になるのは、まず地球の重力に対して耐えられるか? ということ。そして、地震のときに建物に襲いかかる力は重いものほど大きくなるので、まず、 建物の重さを調べないと何もわからないからだ。 1995年6月29日、韓国ソウルで5階建てデパートが突然崩壊し、死者502人を出すという大惨事があったことを覚えているだろうか。もともとこの建物 は地上4階のオフィスビルにする予定だったが、建設途中でデパートに変更したため、ビル中央部の売り場の柱を大幅に取り除いてしまった。そのため、ビルの 自重に耐えきれず倒壊してしまったのだ。あまりに稚拙な事件だが、地震の影響以前に、建物自体の重量を考慮しなければ十分に起こりうることなのである。
次 に、「建物にかかる重さが力としてどのように伝わり、その力に耐えられるか」を調べる。 ⑤建物にどのように重さ(下向きの力)が伝わるかを調べる。 ⑥伝わった重さに、材料が耐えられるかを調べる。 そして、地震や台風が来た場合を想定して検証する。 ⑦地震が来たときにかかる力を、建物の重さから換算する。 ⑧台風が来たときに、建物にかかる力を調べる。 ⑨地震や台風のときに建物にかかる力(横向きの力)に、材料が耐えられるかを調べる。 ここまでが、ルート1の許容応力度計算である。
ここまでで、地震や台風に対して、持ちこたえる建物かどうかをまず検証する。